赤褐色と白。
はっきりと分かれた二色が、まっすぐな縞になって重なっています。
サードオニキスは、8月の誕生石として知られる石です。
きらきらと輝くタイプの石ではありません。
けれど切り口に現れる縞の一本一本は、地中で少しずつ積み重なった層そのものです。
古代の人々は、この層を彫り込んで印章やカメオを作りました。
石そのものの歴史はさらに古く、4000年ほど前まで遡ります。
この記事では、サードオニキスの特徴と名前の由来、石言葉、選び方、そして市場に多い処理品の見分け方までをまとめて解説します。

サードオニキスとは、赤褐色と白の縞模様が層になった石
サードオニキスは、赤褐色から茶色の地に、白や淡い色の縞模様がまっすぐ層になって重なった石です。
切り口を見ると、まるで年輪のように色の層が積み重なっているのがわかります。
この層の一枚一枚が、地中でゆっくり時間をかけて形成された記録だと思うと、模様の見え方も少し変わってくるかもしれません。
正式名称は「サードオニキス(Sardonyx)」ですが、「サードニクス」「サードオニクス」と表記されることもあります。
いずれも同じ石を指しており、英語名の読み方をカタカナに写す際の違いだけです。和名は紅縞瑪瑙(べにしまめのう)といいます。
鉱物としては、水晶と同じ石英の仲間であるカルセドニー(玉髄)の一種で、瑪瑙(めのう)の仲間に分類されます。
市場では縞がまっすぐ平行に重なったものをよく見かけます。
ただしこの「まっすぐ」は、思っているほど確かな手がかりではありません。
理由は後ほどお話しします。
縞がまっすぐに見えるかどうかは、切り方で変わります
サードオニキスを「白い縞がまっすぐ並んだ石」と説明されることがあります。
この説明には注意が必要です。
同じ原石でも、どの向きで切り出すかによって、縞は平行にも同心円にも見えます。
一本のネックレスの中で、平行に見える玉と同心円に見える玉が混じることさえあります。
石の職人は、縞の効果がいちばん映える向きを選んで切り出します。
つまり「まっすぐな縞」は、石の性質であると同時に加工した人の判断の結果でもあるわけです。
ちなみに、縞が同心円状に出たものは目玉のように見えます。
これは「アイ・アゲート」「サイクロプス・アゲート」と特別に呼ばれ、ヨーロッパでは古くから魔除けの目として身に着けられてきました。
なお「白色の直線状の縞目をもつアゲート」という定義は、近年の宝石書に見られるものです。
これはカメオを作るという視点に立った解釈で、宝石の歴史から見ると正確とは言えません。
名前の由来|「サード」と「オニキス」、ふたつの言葉が合わさった名前
サードオニキスという名前は、ふたつの言葉の組み合わせでできています。
- サード(Sard):赤褐色をした瑪瑙を指す言葉で、古代小アジア(現在のトルコ西部)にあったサルディス地方の名前に由来すると言われています
- オニキス(Onyx):ギリシャ語で「爪」を意味する言葉が語源とされ、層状に重なる模様が爪の断面に似ていることから名付けられたと言われています
正確に言えば、オニキスはもともと「白い縞」を指した言葉です。
歴代の宝石書では、その縞目が人の指の爪の白い三日月の部分に例えられてきました。

つまりサードオニキスは、「赤褐色の瑪瑙(サード)」に「白い縞(オニキス)」が重なった石、という成り立ちの名前です。
「オニキス=黒い石」は、明治時代の取り違えから広まりました
ここで一つ、日本ならではの事情をお話しします。
今、日本で「オニキス」といえば、真っ黒なカルセドニーを指すのが普通です。
実はこれ、もとをたどると取り違えなのです。
明治時代の学識者が、オニキスという呼称を「白い縞」ではなく「縞模様」のことだと解釈しました。
そこから、縞のあるアゲートがオニキスと呼ばれるようになります。
さらに、そのアゲートを黒く着色したものが「ブラック・オニキス」となりました。
やがて略されて、ただの「オニキス」になった、という流れです。
黒いオニキスが偽物だという話ではありません。
ただ、名前の由来が「白い縞」だったことを知ると、サードオニキスの白い層の見え方も少し変わってくるかもしれません。
古くは、もっとも神聖な宝石でした
サードオニキスは、オニキスと呼ばれる宝石の中の代表格とされてきました。
紅色と白色の組み合わせが「血のたぎりと生命の発展」を想像させた、というのがその理由です。
古くはもっとも神聖な宝石として扱われていました。
サードオニキスの意味と歴史|古代ローマで愛された印章の石
サードオニキスの歴史は非常に古く、古代エジプト第2王朝(約4000年前)まで遡るとされ、旧約聖書にも複数回登場します。
大祭司アロンの胸当てにつけられた十二の石(誕生石の前身とされる伝承)の一つという説もあります。
カメオの製作法が大きく発展したのは、紀元前4世紀のアレキサンダー大帝の時代からヘレニズム期にかけてです。
その後ヨーロッパで、とくに古代ローマで大いに好まれました。
印章(シグネットリング)やインタリオ(沈み彫り)に作られています。
色の層がはっきり分かれているため、地色を彫り込んで模様を浮かび上がらせる細工に向いていました。
さらに熱した封蝋がくっつきにくい性質があり、印章として実用的でもありました。
ローマでは軍神マルスやヘラクレスを彫り、戦いの加護を願う護符としても使われています。
なお18世紀に作られたウェッジウッドの陶器製カメオ(ジャスパー・ウエア)は、この瑪瑙のカメオをモデルにして作られたものです。
現在8月の誕生石とされているのも、こうした長い伝統が背景にあります。
1912年、米国宝石商組合(現Jewelers of America)が誕生石リストを公式に策定した際、その由緒の深さから8月の枠に選ばれました。
サードオニキスの石言葉
サードオニキスの石言葉として一般に挙げられるのは、「夫婦の幸福」「幸せな結婚」「絆」「健康」といったものです。
古代ローマで印章に使われた石だったことを思うと、「契りを交わす」「約束を証明する」というイメージが石言葉のかたちで残っているのかもしれません。
もっとも、これは後世に付けられた解釈です。
パワーストーンとしては、信頼関係や絆を強める石、家庭運・夫婦円満の石と言われています。
サードオニキスの選び方
良質なサードオニキスを選ぶ際に見るポイントは、主に次の3つです。
- 縞模様のコントラスト:赤褐色と白(または淡色)の境目がくっきりしていて、色の層が明瞭なものほど見応えがあります
- 縞の見え方:まっすぐ平行に重なって見えるものが好まれます。ただしこれは石の種類の違いというより、原石をどの向きで切り出したかによるところが大きい要素です
- 色の鮮やかさ:赤みが鮮やかで濁りが少ないものが好まれます。ただし後述の通り、鮮やかな赤色は加熱・染色処理によるものも多く出回っています
サードオニキスの処理について|色はどう作られるか
サードオニキスは古くから人気の石です。
その一方で、市場に流通しているものの多くに加熱や染色による発色処理が施されていることが知られています。
もちろん、未処理のものも存在します。
ただ、天然のままで鮮やかな赤橙が出ることは多くありません。
未処理のサードオニキスの色は、赤やオレンジというより落ち着いた茶系に寄ります。
処理は2000年前から続く技法です
「処理」と聞くと身構えるかもしれません。
けれどこれは、ごまかしのために近年始まったものではありません。
古代ローマの博物学者・大プリニウスが、すでにその方法を書き残しています。
多孔質の瑪瑙を濃い砂糖の液に浸します。
そのあと酸に漬けると、石の内部に染み込んだ糖分が炭化します。
こうして色が石の奥まで定着します。
この「砂糖と酸」の技法は、19世紀以降ドイツのイーダー・オーバーシュタインで工業化され、現在も使われています。
なお市場のサードオニキスには、マダガスカル産の灰色の縞瑪瑙をこの方法で赤く染めたものも多く含まれます。
処理をした石も天然石であることに変わりはありません。
なぜ縞の部分は染まりにくいのか
面白いのは、石のどこもが同じように染まるわけではないという点です。
白いオニキス縞の部分は、組織の状態から着色がしにくいことが知られています。
一方、通常のアゲートの部分は、組織の粒子と粒子の間に超微細な隙間があります。
この隙間があるために、人為的な着色が可能になります。
つまり縞のコントラストは、染まる場所と染まりにくい場所の差からも生まれているわけです。
石の側にもともと備わっていた構造の違いが、色の対比になって現れているとも言えます。

見分け方の目安
- 縞模様の形状:放射状・同心円状の縞は赤天眼(レッドアイアゲート)など別の瑪瑙である可能性が高く、まっすぐ平行な縞がサードオニキスの目印です
- 色の濃さと調子:未処理のものは落ち着いた茶系に寄ります。鮮烈な赤橙は処理を疑う手がかりです
- ひび割れの染料溜まり:染色品は、細かいひびに染料が濃く溜まっていることがあります。天然の発色ではこうなりません
- 天然にはあり得ない色:紫や青の「サードオニキス」は天然には出ません。染色品です
- 鑑別書:その石が何であるかを確実に知りたいときは、鑑別書付きを選ぶと安心です。ただし鑑別書に産地は記載されません。鑑別書は鉱物種を特定するものです。産地の証明書ではありません
正直なところ、鑑別でも分からないことがあります
「では鑑別に出せば処理の有無がはっきりするのか」と思われるかもしれません。
多くの宝石については、そのとおりです。
信頼できる鑑別機関は、研磨とカット以外の人為的な処理を記載します。
染色品の多くは、顕微鏡でひび割れに溜まった染料が見えるため判定できます。
ただしカルセドニーの染色は、例外として扱われることがあります。
アジア宝石学会(AIGS)は、現在の宝石学的検査では十分な信頼性をもって検出できない処理があり、その場合は処理の有無を報告書に記載しないという方針を示しています。
そしてその例として、染色カルセドニーが挙げられています。
理由は加工方法にあります。
砂糖と酸の技法は、染料を表面から染み込ませるものではありません。
石の内部で糖分を炭化させ、炭素の微粒子を孔に残します。
色の素が石の組織の中に入り込むため、「後から入れた」痕跡が残りにくいのです。
つまりサードオニキスについては、鑑別書に処理の記載がなくても、それは未処理の証明にはなりません。
歯切れの悪い話です。
ですが、分からないことを分かると言うほうが不誠実だと考えています。
当店では、原則として有処理の品としてご案内しています
そこで当店では、サードオニキスは原則として有処理の品としてご案内しています。
未処理であることを証明するのが難しいからです。
証明できないものを「未処理かもしれない」とご案内すれば、期待だけが先に立ちます。
それよりは、処理をした石として見ていただくほうが正確です。
そのうえで申し上げると、処理をしてあることは欠点ではありません。
縞の重なりも、層ごとに違う表情も、石がもともと持っていたものです。
そこは加工では作れません。
なお、この記事の鉱物データや歴史は、飯田孝一先生の著書「天然石のエンサイクロペディア」に拠りました。
サードオニキスのように、鑑別に出しても処理の有無を確定できない石があること。
その事情を踏まえたうえで、当店は原則をお伝えするようにしています。
サードオニキスの鉱物データ
| 英名 | Sardonyx |
| 和名 | 紅縞瑪瑙(べにしまめのう) |
| 別表記 | サードニクス・サードオニクス(読み方の違い) |
| 分類 | カルセドニー(玉髄)・瑪瑙(アゲート)の一種 |
| 主成分 | 二酸化ケイ素(SiO2) |
| 結晶系 | 六方晶系(潜晶質) |
| モース硬度 | 7 |
| 比重 | 2.57〜2.64 |
| 屈折率 | 1.53〜1.54 |
| 主な産地 | ブラジル・ウルグアイ・インド・インドネシア・アメリカ・中国・アフリカ各国・ドイツ・日本 |
| 誕生石 | 8月 |
サードオニキスのアクセサリー
当店でも、サードオニキスを使ったブレスレットなどを取り扱っています。
- 一点物は、現物写真を掲載し、各商品の縞の様子や色味を見比べてお選びいただけます。
- ご奉仕品は、現物写真をご覧いただくことはできません。当店の在庫からランダムに選んでお届けいたします。返品・交換はできませんがお安く提供いたします。

お手入れの際は、モース硬度が高く比較的扱いやすい石ですが、他の石同様に汗・汚れは柔らかい布で拭き取り、直射日光の当たる場所への長時間の放置は色あせの原因になることがあるためお気をつけください。
動画もご覧ください
新入荷のサードオニキスが登場する際には、YouTubeの「新着先取りライブ」でご紹介します。
ライブではマクロレンズによる拡大映像もご覧いただけます。ぜひお楽しみください。
参考文献
飯田孝一 著「天然石のエンサイクロペディア」(オニクスの項)






































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